オンラインにおける取締役会、株主総会の運営

October 19, 2021

執筆者:弁護士 沢田篤志

(目次)

1.はじめに

2.オンラインによる取締役会

3.取締役会の書面決議(みなし取締役会決議)

4.オンラインによる株主総会

5.まとめ

ポイント

① 取締役会は、WEB会議や電話会議によって開催することができます。この場合、情報伝達の「双方向性」と「即時性」の確保が必要です。なお、会社法は、一定の場合、会議を開催せずに、いわゆる書面決議をすることも認めています。

② 株主総会は、会社法上の原則としては、完全オンラインでの開催はできませんが、リアルとオンラインを併用する方法での開催は可能です。

1 はじめに

 スタートアップ企業においては、インターネットを通じてオンラインで取締役会や株主総会を機動的に開催したいというニーズが、少なからずあると思います。

 この記事では、法的にはどのようなことが可能か、そして、その留意点について、ご説明します。

2 オンラインによる取締役会

⑴ WEB会議等による取締役会を有効に実施するための条件

 取締役会への出席の方法について、会社法は特に規定していません。必ずしも物理的に1か所に集まる必要はなく、 WEB 会議や電話会議(以下「WEB会議等」といいます。)の方法でも開催可能です。

 ただし、WEB会議等による取締役会を法的に有効に実施するためには、「取締役間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時にほかの取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組み」が確保されていることが必要とされています。

 したがって、WEB会議等のシステムによって、技術的に、情報伝達の「双方向性」と「即時性」(リアルタイム性)が確保されている状況が必要です。

 例えば、通信状態、マイク、スピーカー、カメラ、ディスプレイ等の性能・状態に問題があり、音声や画像が途切れるなどして、双方向かつ即時のやりとりができない場合には、取締役会の有効性に疑義が生じます。そこで、WEB会議等の開始前にテストをして通信状態等を確認すること、会議の途中でWEB会議システムの通信状態が悪化したときには電話等の代替の手段ですぐに連絡できるようにしておくこと等の準備が必要です。

⑵ WEB会議等による取締役会の活性化のために

 WEB会議システムは便利なツールですが、参加者の反応の把握や、同時に複数人が発言した場合の調整等の場面において、リアルで行う会議とまったく同じというわけにはいきません。WEB会議を活性化し、より機能させるためには、資料の事前共有を行うこと、会議の場で議長がWEB会議の特性を踏まえた適切で丁寧な議事進行を心がけること等によって、双方向の活発な議論を促す工夫が重要です。

⑶ 取締役会議事録の記載

 法律上、取締役会議事録の作成に関し、別の場所からの取締役等の参加についての規定がありますので(会社法施行規則101条3項1号)、取締役会議事録には、別の場所から参加した取締役等について「出席の方法」を記載する必要があります。

 具体的には、「取締役○○○○は、WEB会議システムにより出席した。」等の記載を行います。

 取締役の全員が会社以外の場所からWEB会議等で参加する取締役会も、法的には問題ありません。この場合、取締役会議事録に記載すべき取締役会の「場所」は、議長のいる場所(例:議長の自宅等)とすることが考えられます。

⑷ 取締役議事録での電子署名の活用

 取締役会をリアル、オンラインのどちらで開催するかにかかわらず、取締役会議事録に物理的に押印をすることは、事務処理上、少なくない負担になっています。取締役会議事録をデータで作成し取締役等が電子署名をする方法がとれれば、事務負担を減らすことが期待できます。

 取締役会に出席した取締役及び監査役は、取締役会の議事録への署名または記名押印をする必要があり(会社法369条3項)、議事録が電磁的記録で作成されているときは署名または記名押印に代わる措置として電子署名をする必要があります(会社法369条4項、会社法施行規則225条1項6号、2項)。

 ここでいう署名または記名押印に代わる電子署名について、法務省は、2020年5月、いわゆる「立会人型」の電子署名サービスでもよいとの見解を明らかにしました。「立会人型」の電子署名サービスは、現在最も普及が進んでいる、比較的簡便に利用できるタイプの電子署名サービスです。

 この法務省の見解によって、取締役会議事録を電磁的記録で作成し、取締役等が比較的簡便な方法で電子署名をする方法が有効であることが確認できました。

 取締役会議事録への署名または記名押印は、出席した取締役等が、議事録の内容を確認し、その内容が正確であり、異議がないと判断したことを示すものであれば足りますので、今後、各企業の判断により、電子署名サービスを利用する選択肢は十分にあると思います。

 なお、その取締役会議事録が、登記申請に添付するものである場合には、電子署名に関して、一定の利用条件がありますので、事前に専門家に確認いただく必要があります。

3 取締役会の書面決議(みなし取締役会決議)

⑴ 書面決議の方法

 取締役会においては、実際に会議を開いて議論を行うことが重視されているため、法律上、持ち回り方式による決議は認められていません。

 しかし、機動的な意思決定の必要がある場面もあるため、会社法は、定款で定める場合は、いわゆる書面決議(みなし取締役会決議)を行うことを認めています。すなわち、会社法370条は、定款に定めがあるときは、取締役が取締役会の目的である事項について提案した場合において、当該提案につき取締役の全員が書面(電磁的記録を含みます。)により同意し、かつ、監査役が異議を述べなかったときは、当該提案を可決する旨の決議があったものとみなされると規定しています。

 したがって、緊急に取締役会決議が必要な場合等には、この書面決議の方法を利用することも考えられます。

⑵ 書面決議についての留意点

 書面決議の仕組みを利用すれば、実際に会議としての取締役会を開催しなくても取締役会決議事項について意思決定ができます。

 もっとも、会議の方法で実質的な審理(質疑応答、意見表明等)を経ることによって、はじめて議論が深まり適切な意思決定ができることは多々あります。したがって、 書面決議を多用し、取締役会の機能が形骸化することは適切ではなく、あくまで例外的な方法として位置づけるべきです。

 法律上も、最低3か月に1回以上の頻度で、代表取締役等が取締役会で職務執行状況等を報告することが義務づけられており(会社法363条2項)、3か月以上にわたって取締役会を開催しないことはできませんので、ご注意ください。

4 オンラインによる株主総会

⑴ 法律の状況

 会社法では、株主総会を開催する「場所」が求められているため(会社法298条1項1号)、原則として、物理的な場所で開催しない完全オンラインの株主総会はできないとされています。

 経済産業省は、2020年2月、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド

を公表しています。この「実施ガイド」では、リアル株主総会(物理的な場所で開催する株主総会)を開催しつつ、その場所にいない株主がオンラインで出席等をする株主総会を「ハイブリッド型バーチャル株主総会」と呼んでおり、このようなリアルとオンラインの併用型(ハイブリッド型)であれば、上記の会社法のルールのもとでも株主総会を有効に開催できるとしています。

 また、2021年6月、産業競争力強化法の改正により、一定の要件を満たし、経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた上場会社は、会社法の特例として、「場所の定めのない株主総会」(物理的な会場を用意せず、役員や株主がインターネット等の手段により出席する、バーチャルオンリー型の株主総会)を開催することができることになりました     。

⑵ リアルとオンラインを併用する方法の株主総会

 リアルとオンラインの併用型の株主総会(前述「実施ガイド」で「ハイブリッド型」と呼ばれる方法)は、すでに、相当数の上場企業でも採用されています。

併用型には、大別すると2種類があります。

・ 出席型 オンライン参加の株主が法的な意味で出席しているものとして扱われ、オンラインでリアルタイムに質問や動議の提出もできる方法

・ 参加型 オンライン参加の株主が法的な意味では出席とは認められずオンラインで中継動画を見ることによって株主総会を傍聴する方法

⑶ スタートアップ企業がオンライン「出席型」の株主総会を開催する場合の留意点

 上場企業には多数の株主がいますので、オンラインで「出席型」の株主総会を開催する場合、株主の本人確認、通信障害対策、質問・動議の取扱い、議決権行使の方法等について、周到な準備作業が必要になります。

 これに対し、スタートアップ企業の場合、通常、株主は限られた顔ぶれ・人数のメンバーであると考えられますので、オンライン「出席型」の株主総会を開催するための準備作業のハードルは、それほど高くないといえます。

 スタートアップ企業がオンライン「出席型」株主総会の運営を行う場合の留意点は、次のとおりです。

・ インターネットを通じて、株主総会の開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されている環境があること(リアルタイムで株主総会の状況を画像で送信し株主からも質問や議決権行使ができるシステムを使用する等)。

・ その場合、個々の株主がインターネットを通じて株主総会に法的な意味で「出席」し、質問や議決権行使をすることが可能であること。

・ 議長は、議事の進行にあたって、リアルで開催する株主総会よりも、さらに丁寧な進行を心がけること。

・ 万一、通信に不具合が起きた場合には、いったん休憩を入れて復旧を図る等の適切な対応を行うこと。

・ 株主総会議事録の作成にあたっては、インターネットを通じて参加した株主も「出席」した前提で作成し、また、開催場所と株主との間で情報伝達の双方向性と即時性が確保されていた状況を基礎づける事実(WEB会議システムの使用等)を記載することが必要であること。

5 まとめ

 以上で述べたとおり、取締役会、株主総会のいずれも、WEB会議システムを使用するなどして、情報伝達の「双方向性」と「即時性」を確保すれば、オンラインによる出席・参加が可能です。

 近年、WEB会議システムは広く普及しており、特にスタートアップ企業にとっては、実施のハードルは高くないと考えられますから、ぜひ活用をご検討ください。当事務所では、オンラインでの取締役・株主総会の実施を積極的にサポートしています。

以上